ユキア

プロフィール


ユキア

軍人ではないが、軍隊に所属している治癒士。
軍属として業務をこなしながら自国や世界情勢への理解を深めている。


目的は自国民を他国に拉致されないようにするため、
もし拉致された際には最短期間で奪還できるようにするため。


この目的を達成するためには法整備の優先度が高いと考えている。
しかし、ユキアの国には柔軟に法律を改正するという価値観が薄い。



ユキアの国には拉致被害者が、未認定も含め多数存在する。



どこの国に拉致されたのか分かったとしても、
自国の『最高法規の解釈が複雑かつ軍事力の行使についての制限があまりに多い』ため、
それが外交交渉の足を引っ張る要因の一つとなっている。加害国には舐められ放題。

結果被害者は救出されないまま死を遂げ、
その家族も無念を抱えたまま生涯を終えてしまうことが当たり前となっている。


ユキアも自身の姉を失ない、
警察、外務省、政府などの正当性に疑念を抱いている。

が、公的機関を批判したところで、
自国が拉致被害者を救出することができない存在であるという現状は変わらない。

ならば組織や権力といったモノへの理解を深め、
自身で社会に対して働きかける方が姉の命が活きると思った。



そのための学習と鍛錬を同時にできる軍人になろうとしたが、
13歳のユキアはまだ入隊試験を受けられないので、年齢制限のない治癒士として軍隊に関わることにした。




思想:快心爛漫


ユキアが7歳の時に姉は拉致された。
警察の調べや、拉致に関与して逮捕された犯人の証言などで、
他国による犯行だと判明した。

犯人(工作員)の証言によると『拉致の主な目的はスパイの養成に活用すること』だが、
『誘拐する標的』には様々な条件があり、
ユキアの姉は『未婚の少女』という項目にあてはまっていた。

ユキアの両親は血相を変えて、
他の拉致被害者家族と一緒に救出活動を行った。

といっても他国家による犯行。個々人で助けられるものではない。
だから政治家に救出を要請した。政府を動かす為に署名や広報活動などに尽力した。

数多くの政治家が『必ず全員取り戻す』と意気込みをあらわにした。


加害国へ独自経済制裁が行われた。
報道で拉致問題が世間に認知された。
外交交渉における圧力の一つとして軍事力が必要になる為、
具体的な武力行使に関する法整備が国会で議論された。


が、拉致被害者は一人も帰ってこない。

世論の認知度は時間とともに下がっていく。
世の中はいつも通り、誰も彼もが他愛のないことで笑っていた。


ユキアも心の底から笑いたかった。


だけど誰とも話が合わない。
みんなが笑う理由がわからない。
楽しんでいる娯楽の面白さがわからない。
動物に感情が設定されている意味がわからない。

他人の笑顔を見ると息がつまった。心が痛くなった。
ユキアが10歳になっても、姉は帰ってこなかった。


世間には『少数の拉致被害者とその家族のために、国民の税金が無駄に使われている』という意見があった。
外務官僚の中には『拉致問題で両国の友好関係が崩れてはならない』
といった考え方で解決に消極的な人間も少なくない。

それでも事態は少しずつ前に進んでいた。

『今年こそ必ず全員取り戻す』と意気込む政治家が増えた。
インターネットの活用で拉致問題が世界にも認知されるようになった。
軍事力の行使に関する法改正の議論が過熱している事や、
加害国が他国とも友好関係を悪化させていることなどが影響し、外交交渉が若干有利に進められるようになった。

今度こそ、姉と再会できるはずだとユキアは信じた。


しかしそのまま3年が経過し、姉の現状がわかる動画がインターネット上に公開された。


突如アップロードされた動画の内容は、
『四肢を切断されたユキアの姉が、加害国首脳陣や軍関係者の慰み物にされている姿』だった。

少女に対し、楽しそうに暴行を加える加害国上層部に世界中が憤怒した。

加害国は『国内の裏切り者が制作した作り物の映像だ』と主張したが、
『だったら危害を加えられていないはずのユキアの姉を出せ』という国際世論に対し、
加害国は偽者の少女をユキアの姉として表明した。

当然、火に油がそそがれただけ。
ユキアの姉がすでに死亡していることも判明。

加害国はユキアの国以外からも経済制裁などを受けることになり、
国家存続が危ぶまれるようになった。

加害国はその後魔物と手を結び、人類にとっての害悪国とみなされるようになった。
これにより、拉致被害者の奪還はさらに難しくなり、かつその安全にも期待ができない状態になってしまった。


一方、姉が猟奇的な被害にあっていた動画は世界中に拡散し、
それを政治や報道、雑誌、言論、インターネット生放送などのネタにしようと、
様々な人がユキアの家を訪れた。

昼夜問わず、プライベートに配慮せず、
ひたすら自分達にとって有益な言葉を引き出そうとユキアと両親にまとわり付いた。


政治家は言った。
『加害国の民は今、経済的に困っている。拉致問題などが解決しないと援助できないというのはかわいそうだ。
 ユキアちゃん、もしくはご両親の方から税金を使って経済支援をするべきだと言ってくれないか?』

報道関係者は言った。
『娘がレイプされた映像を見て勃起しましたか? 父親である自分で犯したいと思ったりしましたか?』

インターネット生放送者は言った。
『うぇ~い! 今どんな気持ち? 俺はとんでもねぇオナネタができて最高にメシウマだぜぇ!』


こういった人間が延々と話しかけてくる。
父親は心労で倒れ、母親はおかしくなった。ユキアは無表情で無言だった。

それでも世の中は動いていく。
今日もどこかで理不尽がうごめいている。


『ボクはもう……耐えられない』


ユキアは自殺を考えた。
自分の部屋で首を吊ろうとして、ふと、
窓の外を見ると我が家に張り付いていた雑誌記者の姿がそこにあった。

ユキアが死ぬ瞬間を撮影しようと構えている。

『そっか……ボクは勘違いしていたんだ。人間は他人がどこでどう死のうが何とも思わない。
怒ったふり、泣いたふり……心の底から他人の死に感情を揺さぶられたりはしない。
ボクだって、今この瞬間世界のどこかで飢えに苦しんでいる人のことを気にもかけてない』

だから姉は死んだのだと思った。

『だってみんなにはお姉ちゃんを救う理由がないんだから』

そういう自分だって大人にお願いするだけだった。

誰よりも姉を救いたいと思っていたはずのに、
自分は『加害国の人間を皆殺しにしてでも姉を取り戻す』という意志と行動に及ばなかった。

それを『弱さや甘え』と認識したユキアは自殺をやめて『生き直す』という発想に至った。
記憶に残っている『姉の明るさや前向きさを自身の魂に引き継いでともに生きよう』と決意した。

『お姉ちゃんならここで自殺なんかしない。残りの拉致被害者救出の為に全力と人生を尽くす』

そんな人間だったから憧がれた。誇れた。大好きだった。


『だから……追いかける! 掴むんだ、お姉ちゃんを!』


ユキアは姉という理想像を明確に意識した。